私は日本で第一子を妊娠、出産。息子が1歳半ごろにスペインに引越ししました。
スペインに引越した頃は、妊娠初期。引越し早々、妊婦でありましたが流産した為、到着早々、スペイン公立医療システムのお世話になりました。
日本では、当たり前と思っていた制度がスペインでは全く違います。当初、私は、その違いに苛立ちと不満さえ感じました。
スペイン引越し後に、書類申請などで、必ずイライラすることはあると思いますが、心の準備をしていると、イライラも「しょうがない」に変わるかもしれませんね。
スペイン引越し前に知っておきたいスペインの医療システム事情です。
スペインの医療システムについて
まず、スペインでの妊娠と出産を説明するには、スペインの医療システムについて説明が必要です。日本の保険制度とは、異なるシステムとなっています。
スペインでは、公立病院であれば診察・治療費は、全て無料です。よって、妊娠中も出産も完全無料です。歯医者は公立病院外の医療となり、全額実費です。
薬代は、処方箋を出してもらえるので、ごくごく安価で購入できます。
例えば、私が購入した不育症治療用のヘパリン注射は、定価だと30本入りで150ユーロほどです。それが、処方箋があると5ユーロ程度になります。
一見、全て無料なので、日本よりも優れたシステムのように聞こえるかもしれませんが、この「無料の弊害」がとても大きく、日本の医療制度に慣れている私には不満が募ります。
住民登録をしている地域ごとに、専属のドクターがいるのですが、急患意外の用件などは、この地域ドクターに、まずは検診してもらいます。簡単な症状などの場合は、薬の処方箋を書いてもらい、治療終了です。
ただし、専門医の診察が必要な場合、例えば眼科や皮膚科での検診が必要な場合。まずは地域ドクターに様子を見てもらい、地域ドクターを通じて眼科や皮膚科の予約リクエストをします。ただし、その時点では予約日時はわからず、後日、郵送で指定の日時が送られてきます。
予約確認の手紙が届くのは、1週間後ぐらい。開封して書かれている予約日時は、受け取った日の1ヶ月後と言うこともざら。
とにかく、最初の診察予約までに、時間がかかるのです!
スペインでも、これは問題となっています。手術が必要な患者さんの手術予約が、手術予約がいっぱいの為に3年後と言うケースも。その間に、死んでしまうんでないか!?と問題になっています。
スペインの私立医療保険
その為、スペインでは私立医療保険の加入が盛んです。日本で医療保険と言うと、入院や通院した日数や回数に対して一定額が支払われるタイプですが、スペインの場合は、私立病院での診察費用が全無料になるタイプの私立医療保険です。
例えば、私の加入している医療保険は、毎月60ユーロ支払っていますが、加入している保険会社のグループに入っている私立病院での診察、治療、手術が無料となります。
月当たりの費用が、少し割安な保険の場合は、診察ごとに2ユーロほど支払うタイプの保険もあります。だいたい、50ユーロ前後が相場のようです。
会社員の場合は、家族も含めて、会社で私立医療保険に加入してくれたりするようです。
ちなみに、1歳の息子の保険料は、私と同額の60ユーロです。私は、外国人なので居住許可証の為に、私立保険加入が義務付けられていたこと(許可が出た後に保険解除しても良い)と、これから出産を希望していたので、私立病院にお世話になることが多いと思い加入しましたが、ハーフの息子は私立保険は未加入です。
公立医療システムに比べて、私立医療保険の良いところは、たくさんあります。
病院を選べる
予約から診察までの期間が短い
同じ医師からの診察を受けることができる
設備が最新
スペイン公立医療の問題点
私立医療保険のメリットの裏を返せば、公立医療システムのデメリットになります。
病院が選べない
予約希望から、検診までの期間が劇長
検診の度に違う医師
設備が超古い!(昭和クラス)
日本では当たり前のように選べる病院が、公立の場合は住んでいる地域に属した公立病院のみとなります。
そして、前述の通り、予約希望から、診察に辿り着くまで、非常に時間がかかる。
公立病院での診察では医師を選ぶことができず、毎回の予約の度に異なる医師となる為、また症状などを説明し直すことも。
そして、先生に当たり外れがあります。私は、初めてスペインの公立病院にお世話になったのは、2度目の流産(引越した時に妊娠していた子)だったのですが、女医の心ない態度に、本当に嫌な思いをしました。
また、不正出血があり、急患に行ったのですが、こんなのは急患扱いではないと、追い返され診断は受けることが出来ず。結局、その後に流産しました。
私のスペインでの最初の公立病院体験が、そんなだったので、スペイン医療制度には、最初から文句と不信感だらけです。
そして、設備が古い病院が多くなっています。妊婦のエコー検査で使用される足の開く分娩台がありますよね。
私の住む地区の公立病院の寝台は、とても古く、足を置く場所が銀色の金属製です。
レトロ?昭和?日本じゃ、絶対ありえないレベルの設備です!レトロ過ぎ。私から見ると、アフリカなどの発展途上国で使用しているようなレベル。
私立病院のデメリット
私立病院の唯一のデメリットは、薬代が100%実費となる点です。前述の不育症治療用のヘパリン注射は、処方箋なしの場合、本当に高額です。
なので、公立医療システムの地域ドクターに、私立病院で指定された薬の処方箋を書いてもらうようにするのが一般的です。でも、これって医者周りをしなくてはいけないので2度手間。
特に、私のように田舎に住んでいる場合、地域ドクターは毎日、村の診療所に待機している訳ではなく、週に3回、午前中の2時間のみです。タイミングを合わせて行くのが面倒です。
田舎暮らしの場合は、近くに薬局もないので、車で10分走って薬を取りに行く手間。珍しいタイプの薬の場合は、車で30分かけて、少し大きな街まで行く必要があったり。
治療を完了させる為に「私立病院での診察→地域ドクター(処方箋発行)→薬局」と1日がかりの日もあるのは、私立病院のデメリットというよりは、スペインの医療システム全体の問題です。
スペインは医療制度に限らず、書類関係発行など効率的でなく、本当にイライラします。特に、日本の快適なシステムに慣れている私としては、、、
書類発行や登録がスムーズにいかないのがスペイン
私は引っ越して早々に、妊娠中の為に、医師にかかる必要があり、結構、苦労をしました。
日本なら、外国人の夫でさえも、区役所で数時間の手続きで国民健康保険の加入は終了です。しかし、スペインに引っ越して、すぐに公立医療システムに乗るのにも時間がかかります。
ご想像の通り、1日では、公立医療用のカードは発行されません。申請前に、先に住民登録をしたり、様々な手続きが必要です。
結果から言いますと、私がスペイン人が持っている公立医療カードを手にするまでは、半年以上かかりました。
その間、私は全く公立医療の受診が出来ないかと言うと、そういう訳ではありません。「急患と妊娠」のみを例外として、カード発行前でも公立医療システムでの受診が可能です。
もし出産希望なら私立医療保険がおすすめ
もし、これからスペインに引っ越す予定がある方で、近いうちに出産を希望されているのなら私立医療保険の加入がおすすめです。
日本では、毎回の検診の度にエコーが当たり前ですが、公立医療システムのみを利用した場合、妊娠初期、中期、後期に3回のみです。
私のように流産の可能性などがある場合は、頻度は高くなりますが、健康な妊娠なら、最初のエコーは妊娠12週です。
私立病院の場合は、エコー頻度が高いようです。私は不育症ということもありますが、私の私立病院の先生は、毎回エコーしてくれます。
前述の通り、私は公立病院で、流産の際に、とても嫌な思いをしました。妊娠中は、不正出血や、急な体調変化などで不安になることもあるはず。私立病院でも急患を設けているところもあるので、私立病院なら心配なく診てもらえます。
公立の急患は、本当に急患であることを証明する必要があります。なので、私のケースのように、担当者協力的でない場合は、過去に流産歴があっても診てもらえないこともあります。
そもそも、居住証明書の取得条件に、現在は私立保険の加入が条件になっているようです。私の場合は、加入の証明書が、提出書類の1つとなっていました。
私の居住証明書申請が進まなかったのは、この書類が揃っていなかった為に遅れてしまいました。申請の時に教えてくれれば良いのに、書類不足の通知が来たのは3ヶ月後、、、、。
まとめ
日本の医療制度に慣れていると、スペインで公立医療だけだと、本当にイライラするかもしれません。
1年ぐらい住んでいると、その医療システムの流れも分かってきて、早く診察してもらうためのコツと言うかトリックなども掴んでくるでしょう。
「郷に入れば郷に従え」しょうがないですね。
スペインの医療システムで唯一、気に入っているのは、不育症治療が日本よりも格安で済むことです!薬代が、本当に違う!興味ある方は「【妊娠5週1日】2回目の検診。スペインの不育症治療費用について」で不育症治療の薬代を比較しています。
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